毎週水曜日のペットセンスのパピークラス。
いろんな子犬たちがやって来ますが、先週新しく来たのは、
めずらしい秋田犬の子犬でした。
毛がふさふさとして、洋犬には見られない高貴なたたずまいに、
同じクラスにいた他の飼い主さんたちは感嘆の声を漏らします。
ところが、当の秋田犬の飼い主さん
(20代後半ぐらいのモデルみたいに細くてきれいな女性)は、
なんだか悩みを抱えているような暗い表情でトレーニングに参加しています。
犬もそれに気がついているのか、はたまた秋田犬の持っている
独立心旺盛な性格のせいか、
なかなか言うことを聞かず、トレーニングが思うように進みません。
心配になってコレットや他のトレーナーがかわるがわる助けに入り、
アドバイスをしていると、ますます不安そうな顔になってしまいました。
1時間のレッスンが終わり、飼い主はさっそくコレットのところに
個人的に質問にやってきました。
長い長い話し合いの中で、こんな会話が飛び出しました。
「実は、この子犬は私の誕生日の日に、
友人から贈られたバースデー・プレゼントなんです。」
「しかも、私は犬が欲しいなんて言ったことは全くなくて、
友達が私をびっくりさせようとして、誕生日までナイショにしていたの。
バースデー・サプライズだったの。」
イギリスではよく、“サプライズ・プレゼント”という企画をするのです。
これは誕生日や記念日に行われるもので、
本人には全くナイショで用意をし、
当日にびっくりさせるという趣向のもの。
「オーマイガー!!!」といって、本人がびっくりするというシーンを、
テレビでもよく見たことがあります。
びっくりした分、もらった感動も大きいということらしいですが、
本人の意思を確かめていないで用意するため、
中には、「え~なにこれ~」(いらないという意味)というプレゼントもあるはず・・・
それが、この秋田犬の子犬だったというわけです。
でも、そうはいっても子犬ですし、生き物ですから、
いらないからじゃあ交換だとか、捨てるとか、使わないとかいうことができません。
彼女が悩んでいたのは、これが原因だったのです。
しかもよりによって秋田犬です。
これがチワワとかヨーキーとかだったら、まだ飼いやすかったかもしれません。
(それでも、私は子犬をプレゼントとして、人にあげることはよいことだとは思いませんが)
体が大きくなる上に、トレーニングも難しく、
下手をすればものすごく攻撃的になってしまうかもしれないこの犬種では、
彼女の悩みも相当なものでしょう。
プレゼントする方はとってもめずらしい犬種だから、
なおさらびっくりするだろうと思ったのでしょうが、
あまりにも短絡的で安易な考え方です。
この女性の偉いところは、子犬の飼い主になって責任を感じ、
パピークラスにやって来たことです。
でも、本人がこれからこの犬と何年も一緒に暮らすことに、
大きな不安を感じているので、
今後どうすればよいのかを、真剣に考えていかなくてはいけません。
とりあえず、誰かの助けが必要だろうということで、
一緒にクラスでトレーナーをしているイングリッドが、
個人レッスンを請け負うことになりました。
今日のクラスにはこの犬はやって来ませんでした。
イングリットから事情を聞くと、
なんとこの飼い主さん、もっと悪いことに、
フルタイムでお仕事をしていて、日中はほとんど家にいないので、
子犬の面倒が見られないのだそう・・・
仕方なくイングリットが日中預かって面倒を見ることになったらしいのですが、
プロである彼女もこの犬のトレーニングにはかなり手こずっているらしいです。
秋田犬って日本では、熊と戦うことができるほどの
強い犬として知られていますよね。
だから、強い警戒心や攻撃的な性格はもともと持っているもので、
トレーニングで人間に従順な犬にするには、
飼い主の努力が必要です。
日本ではほとんど外で飼われてきた犬だと思うので、
それほど攻撃性が大きな問題にならないのかもしれませんが、
この犬を家庭犬、愛玩犬として家の中で飼おうと思ったら、
それは大変なことでしょう。
この犬を飼うことに前向きで、犬を愛している人にしかできないことだと思います。
問題は、この飼い主がどれだけ「びっくりプレゼント」のこの犬を
愛することができるかにかかっています。
渋谷の忠犬ハチ公は秋田犬だったそうです。
主人の帰りを何年も待っていた忠実な犬になったのは、
死んだ飼い主の犬への深い愛情があったからでしょう。
ハチ公も秋田犬の持ち前の強い独立心と他の人になつかない警戒心、
そして他人の言う事を聞きいれない断固とした意思があったからこそ、
何年も1頭だけで、渋谷駅の前で主人の帰りを待っていられたのだろうと思います。
(そうでなければ、新しい飼い主にすぐに慣れて、可愛がられているうちに、
元の飼い主の記憶は薄くなってしまうはずですものね)
この子犬がどんな風に成長していくのか、
楽しみではありますが、やはり心配も大きいです。
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